INTERVIEWS
スタッフインタビュー
DESIGN FACTORY
予定不調和のさきに一瞬の非日常がある
時の流れを感じるビルディングの外観のように、スタジオの新しい空間でも時を経た美しさを表現したい。そんな願いを可能にしたのが空間アーティスト集団・グリッドフレーム(GF)だ。空間づくりの考え方と実践について、代表の田中さんとディレクターの久保さんにお話をうかがった。
古いもののもつ美しさへの共感
都会でありながら緑が多くゆったりとした空気が流れる芝公園。そんな街の一角にSTUDIO MARLMARL芝公園店はある。
「ゆったりとした空気の中で、時を経たものに美しさを見る、スタジオマールマールと私たちの感性に繋がりを感じました。お互いに響きあうことが仕事にも作用するので、いい空間になる予感はありました」
スタジオ空間を象徴するような螺旋階段も19世紀に生産様式が確立された重量形鋼が使用されており、まるでずっと昔からそこにあったかのようだ。天井まで届く階段は、一度まとまった案をゼロベースで見直すことで生まれたという。時間の限り考え、手を動かす姿勢は「予定不調和」という言葉に表れている。
空間を読み解き、ダイナミックに再構築する
スタジオ空間に元々あったものは、大きな窓と幾何学的な大理石の床。それらの歴史性を尊重しながらコンテクストを読み、浮かび上がるレイアウトから螺旋階段が造られ、かつては家屋の外壁だった木材を使った舞台が、漆喰に土を混ぜ込んだ壁が造られた。
既成の素材とは異なる、古民家の外壁のように風雨にさらされ時を経て規格の枠からはみ出した“想定外”の素材が、GFの掲げる予定不調和には欠かせない。
「予定調和のものづくりはしたくない。想定外には新しいアイデアが付随しているから、むしろ積極的に想定外を取り入れようと模索するうちに、時を経た素材を新しい空間に組み込む「ソトチク」の取り組みが生まれました」
想定外を楽しむソトチク
「ソトチクの“ソト”は想定外の“外”に由来しています」と久保さんの言うように、スタジオには随所にソトチクの素材が用いられている。
白い漆喰に山の土を塗り込んだ大きな壁や海風や太陽光を受けて錆の進行した鉄板など、素材に付随する時間と場所に由来したストーリーは聞き手の好奇心をくすぐるだけでなく、つくり手にも刺激とエネルギーを与えてくれるという。
設計から制作、そしてスタジオを訪れる人へと受け継がれる”創造性の連鎖”
GFの仕事は素材だけでなく手法もユニークだ。設計はクライアントの構想を原点として、それをストーリー化することに力が注がれ、その解釈は現場で手を動かす人へと委ねられる。解釈が一致しない場合もそれを多様性として歓迎しつつ、レイヤーを重ねながらクライアントも含めて誰もが自分がつくったと思える空間をつくり上げる。
“創造性の連鎖”と呼ばれる手法でできたスタジオ空間はフォトグラファーへと委ねられ、一瞬の非日常を共有するご家族と子どもにリンクしていく。
「人が共鳴して豊かな時間をつくり上げられるような、永遠の未完成性をもった空間であってほしいですね。子どもがたゆまず成長していくように」