INTERVIEWS
スタッフインタビュー
DESIGNER
ラグジュアリーを創造する
“美しい無駄”
日本が世界に誇れるデザイナーとして国内外で活躍の場を広げる「pillings(ピリングス)」の村上亮太さん。STUDIO MARLMARLとタッグを組み、心ゆくまでラグジュアリーにこだわった子ども服ブランド「STUDIO MARLMARL × pillings」をスタート。
このラグジュアリーウエアが、今回スタジオの新衣装として登場した。
村上さんがこの服作りに込めた想いについてお話を聞いた。
はじまりは、母の“手編みのニット”でした
村上さんがファッションに目覚めたのは小学校の頃。幼い頃から当たり前のように着ていたお母さんが作った服を、同級生に揶揄されたことがきっかけだったという。
「周りの友人たちが着ていたのはスポーツブランドのジャージ。私が着ていたのは手編みのニットやパッチワークのついた服。みんなと違うことが嫌で、ちょっとの間ですが不登校になったこともありました」
その後、不登校の理由を知ったお母さんが、友達と同じような服を買ってくれ、まずはマネをすることからスタート。他者と自分を比較するという意味では、ファッションは社会性のひとつ。それに子どもの頃から気づけたことは、とても大きかったと語る村上さん。
ファッションで繋ぐ、愛情のバトン
気づけばファッションの道へと歩みを進めることとなり、時を経てデザイナーとしてのオリジナリティを模索していた際に、村上さんが立ち戻ったのは“母の手編みニット”だったのだそう。その後“pillings=毛玉たち”という名称で、ニットを軸としたブランドへと成長していく。
「自分にとってのファッションの原体験。心がスポンジのように柔軟で、何でも吸収出来る子ども時代の体験は、その人の人生を大きく変えるくらいの影響力がある。思えば“手編みのニット”は母の愛情そのものでした。今回このお話をいただき、私が母から受け取った愛情のバトンを、子どもたちの未来へと繋げる、とても嬉しい機会だと思いました」
STUDIO MARLMARL × pillingsのファーストコレクションとして村上さんが手掛けたのは、ニットレースとパッチワークを駆使した全4LOOK。
「MARLMARLのアイコンである、丸いスタイから着想を得た襟付きセットアップ。母の手編みニットにもあった花モチーフが散りばめられ、まるでブーケみたいなワンピース。手刺繍で縫い付けられたアメ車や花のシルクアップリケが目を惹くスーツ。どれもどこか懐かしさもあり、大人も子どもも心が踊るものばかり」
“真のラグジュアリー体験”を、子ども達の未来へ
今回作ったニットレースのシリーズは、10名ものニッターさんが数日がかりで編み上げたもの。スーツはpillingsとしても初の試みとなるパッチワーク職人の方とのコラボレーション。本来ならミシンを使うところも、すべて職人さんが手作業で縫い合わせた渾身のラインナップ。
「昨今の技術の進歩によって、もっと安価に、もっと簡単に、これに近いものは作れるかもしれません。それでも大量消費されるプレタポルテ的なものでは感じることのできない、手作業だからこその圧倒的なオーラや温もりがある」
効率化が進む今の時代、逆にあえて無駄に時間を使ってモノを作ることがとても贅沢と語る村上さん。これこそがまさに“美しい無駄”。今回は、徹底的にこの“美しい無駄”を突き詰めることにこだわり続けたという。
子ども達に伝えたい「紡ぐ価値、育む感性」
ニット職人の育成などにも力を入れている村上さんが、今回の取り組みを通じて、もうひとつこだわったことがある。それは日本の職人の方々の技術力の高さを、より多くの子どもたちに知ってもらいたいということだ。
「ファッション業界に身を置く者なら誰しもが憧れるパリのクチュリエにも負けない、日本が世界に誇れる高い技術です。そんな素晴らしい職人技を駆使して、とことん時間を費やして作り上げた、これこそが最高のラグジュアリーだと思います」
今回のコレクションは、販売だけでなくSTUDIO MARLMARLの衣装としても活用。より多くの子ども達が「心の贅沢」や「本物の価値」といった真のラグジュアリーに触れる体験を担うことになる。
「すぐに分からなくてもいい。大人のになって気づくのでもいい。本質を見抜く力を、日本が誇る手仕事の素晴らしさを感じる心を、育むきっかけ作りになれば嬉しいです」